
【第8回】
レッサーパンダのマーキングの匂いは?お尻をこする理由

「▲お尻を木にスリスリ。一見お茶目なポーズの裏には、野生を生き抜く大切な理由がありました。」
動物園のレッサーパンダたちを眺めていると、
展示場の中をトコトコと歩き回りながら、
時折、
お尻を木の幹や岩の角に「スリスリ」と、
こすりつけている姿を目撃することがあります。
腰を落として、
一生懸命にお尻をこするその仕草は、
まるで「お尻が痒いのかな?」と、
思えてしまうほどコミカルで可愛いですよね。
しかしながら、
彼らがこの行動をとるとき、
頭の中では痒みを癒やしているわけでも、
遊んでいるわけでもありません。
実はこれ、
レッサーパンダにとって生きるために欠かせない、
**「においマーキング(臭気標識)」**という、
非常に重要なコミュニケーション行動なのです。
「一体どんな匂いがついているの?」、
「犬や猫のマーキングとは何が違うの?」と、
気になりますよね。
今回は、
レッサーパンダの知られざる匂いの世界を、
徹底解剖!お尻をこする本当の理由や、
驚きの匂いの正体、
そして足の裏に隠された秘密までの、
全貌を明らかにして行きたいと思います。
第1章:お尻をスリスリ!「においマーキング」をする本当の理由
野生のレッサーパンダは、
第7回でもお伝えした通り、
群れを作らずに一頭で暮らす「単独行動」の動物です。
彼らは広い森の中で、
それぞれの「縄張り(テリトリー)」を持って暮らしています。
しかしながら、
言葉を話せない彼らは、
どうやって「ここはボクのエリアだよ!入ってこないでね!」と、
他の個体に伝えているのでしょうか。
その答えこそが、
お尻をこすりつけることで残す「匂い」です。
匂いは彼らにとっての「SNSの書き込み」
レッサーパンダのお尻(肛門のすぐそば)には、
「肛門腺(こうもんせん)」という、
特別な分泌腺(臭腺)があります。
ここから出る分泌液を木や岩になすりつけることで、
彼らは目に見えない「匂いの看板」を設置しているのです。
このマーキングには、
主に以下のような重要なメッセージが込められています。
🔵:縄張りの主張:ここはボクの場所だから、
勝手に入らないで!」というサイン。
🔵:自己紹介:「ボクは元気なオスのレッサーパンダだよ」という、
身元証明。
🔵:恋のメッセージ:冬の繁殖期になると、
メスが「私はここにいるよ、恋人募集中!」という、
ラブレター代わりに匂いを残します。
彼らにとってマーキングポイントは、
人間でいうところの「SNSのタイムライン」のようなもの。
他の個体が残した匂いをクンクンと嗅ぐことで、
「ふむふむ、最近あいつがここを通ったんだな」、
「素敵なメスが近くにいるぞ」といった、
最新の情報を読み取っているのです。
第2章:どんな匂いがするの?気になる「匂いの正体」
ここで一番気になるのが、
「レッサーパンダのマーキングって、
やっぱり臭いの?」という疑問ですよね。
肉食動物のマーキング、
(スカンクのガスや、犬・猫の尿スプレーなど)といえば、
強烈な悪臭をイメージする方が多いでしょう。
しかし、
主食の9割が竹であるレッサーパンダのマーキングは、
私たちの想像を裏切るちょっと意外な匂いがします。
嘘のような真実は「それほど臭くない」
この嘘のような真実は、
実際に近くで彼らの匂いを嗅ぐことができる、
飼育員さんたちの証拠によって明かされています。
レッサーパンダのお尻の腺から出る分泌液は、
決して「ツーンとする悪臭」や、
「生臭い匂い」ではありません。
個体差や季節にもよりますが、
人間が嗅ぐと以下のような匂いに、
例えられることが多いです。
🔴:ちょっと甘酸っぱい果物のような匂い
🔴:香ばしいポップコーンやナッツのような匂い
🔴:少し古いお茶の葉や、蒸した竹のような匂い
主食が植物(竹や笹の葉)であり、
大好物が果物(リンゴ)であるため、
体内で作られる分泌液もどこか植物性の、
比較的マイルドで独特な、
香ばしさを持った匂いになります。
野生の王国では天敵に居場所を悟られすぎないよう、
絶妙な塩梅(あんばい)の匂いへと進化したのかもしれませんね。
第3章:お尻だけじゃない!「足の裏」からも匂いが出る秘密
レッサーパンダのマーキングについて、
さらにマニアックで驚くべき事実があります。
実は彼ら、
お尻からだけでなく、
なんと「足の裏」からも、
独自の匂い物質を分泌しているのです。
歩くだけで道しるべができる「足底腺(そくていせん)」
第4回で、
レッサーパンダの足の裏には
冷たい雪や滑る木の上を歩くために、
「硬い毛がびっしり生えている」という、
お話をしました。
しかしながら、
そのもこもこの毛に隠された、
指の付け根付近には、
「足底腺」というもう一つの小さな臭腺が存在します。
彼らが木の上をトコトコと歩くだけで、
足の裏から無色透明の分泌液がジワリと染み出し、
歩いたルートに自動的に自分の匂いが、
残る仕組みになっているのです。
これには「帰り道迷子防止(道しるべ)」の効果や、
木の上という三次元の複雑な移動空間の中で、
確実に自分の足跡(匂いのライン)を、
仲間に伝えるための役割があります。
お尻でドカンと大きな看板を立て、
足の裏で細かくナビゲーションを引いていると思うと、
彼らの匂い戦術は本当に完璧ですよね。
「足の裏の足底腺やお尻の肛門腺に、
関する詳しい仕組みについては、
詳しく紹介されています。」
第4章:動物園での観察ポイント:スリスリの「その後」に注目!
動物園へレッサーパンダを観に行く際、
彼らのマーキング行動を高確率で観察できる、
ポイントをご紹介します。
チェック①:朝一番の「お引越し」の瞬間を狙え!
動物園のレッサーパンダたちは、
夜間はバックヤード(寝室)で過ごし、
朝になると展示場(屋外やガラス室)へ、
出てくるスケジュールが一般的です。
朝、展示場に放たれた直後のレッサーパンダは、
非常に活発にマーキングを行います。
「夜の間に自分の縄張りが荒らされていないか?」を、
確認しながら、
お気に入りの丸太や突起物に、
お尻を次々と「スリスリ、スリスリ」とこすりつけて回ります。
開園直後の時間帯は、この行動を見る最大のチャンスです。
チェック②:スリスリした後の「フレーメン現象」に注目
レッサーパンダがお尻をこすりつけた後、
あるいは他の個体がマーキングした場所を見つけたとき、
その場所をクンクンと熱心に嗅ぐ行動が見られます。
その際、匂いを深く吸い込もうとして、
口を半開きにしたり、
舌をペロペロと出し入れしたりする、
ちょっとマヌケで面白い表情、
(フレーメン現象に似た行動)をすることがあります。
これは、上あごの奥にある、
「ヤコブソン器官(嗅覚を補助する器官)」に、
匂いを送り込んで、
相手の情報を詳しく分析している最中の顔です。
スリスリの仕草を見つけたら、
その後の「お顔の表情」まで、
じっくり追いかけてみてくださいね。
- フレーメン現象(フレーメン反応)とは、
- ウマやネコなどの哺乳類が、
- 強い臭いやフェロモンを嗅いだときに、
- 上唇を引き上げて口を半開きにし、
- ぼんやりとした表情を見せる、
- 生理現象のことです。

「▲他の仲間の匂いを発見!口を少し開けて、残されたメッセージを熱心に読み取っています。」
第5章:まとめ:お尻スリスリは、優しく力強い情報交換の証
今回の内容をまとめてみましょう。
レッサーパンダが一生懸命に、
お尻を丸太にこすりつけている姿は、
一見するとただの可愛いユーモラスな珍行動に見えます。
しかしそこには、
単独で生きる彼らが、
無駄な争いを避けつつお互いの存在を、
尊重し合うための、
野生の知恵と優しい、
コミュニケーションの仕組みが、
ぎゅっと詰まっています。
今度動物園で、
お気に入りの木にお尻を、
スリスリしているレッサーパンダを見かけたら、
「今、一生懸命に自分の看板を更新しているんだな」、
「どんなメッセージを書いているのかな?」と、
彼らの目に見えない匂いの世界を想像しながら、
あたたかく見守ってあげてくださいね!
- 【AI生成画像について】
- ※本記事のアイキャッチ画像は,Geminiに搭載されている
- 画像生成機能(Imagen)を使用したAI生成画像
- (Image generated by AI)です。イメージ画像のため、
- 実際の個体や現地の状況とは異なる場合があります。
- 【出典・参考文献】
- 公益財団法人 えどがわ環境財団・自然動物園



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