温帯に生きるフンボルトペンギン!生態から日本との絆まで解説

目次

温帯に生きる愛されペンギン:フンボルトペンギンの真実とその魅力

「ペンギン」と聞くと、

誰もが氷の張る極寒のアンテナ(南極)や、

吹雪の中で身を寄せ合う姿を想像するでしょう。

 

しかし、

世界に生息する全18種類のペンギンのうち、

氷の上で暮らしているのはわずか数種類にすぎません。

 

今回スポットライトを当てるのは、

日本の水族館や動物園で最も広く飼育され、

私たちにとって一番身近な存在とも言える、

「フンボルトペンギン(Humboldt Penguin)」です。

 

彼らは寒冷地ではなく、

南米の温暖な海岸線に暮らす「温帯のペンギン」です。

一見するとユーモラスで愛らしい姿をしていますが、

 

その生態や歴史を紐解くと、

過酷な自然環境を生き抜くための驚くべき知恵と、

現在直面している深刻な絶滅の危機が見えてきます。

 

本稿では、

フンボルトペンギンの知られざる生態から、

日本との深い絆、

そして私たちが未来へ繋ぐべき課題までを、

徹底的に解説して行きたいと思います。

 

❤:1. フンボルトペンギンとは?:基本プロフィールと身体の特徴

 

▲ お腹の黒い斑点模様の並び方は、人間でいう「指紋」のように1羽ずつ異なります。

 

フンボルトペンギン(学名:Spheniscus humboldti)は、

鳥類マゼランペンギン目ペンギン科フンボルトペンギン属に分類される鳥類です。

その名前は、

彼らが暮らす海域を流れる、

「フンボルト海流(ペルー海流)」に由来しています。

この海流を世界に紹介した、

ドイツの偉大な科学者・探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトの名を冠した、

歴史あるペンギンです。

身体の大きさと外見の特徴

フンボルトペンギンは、ペンギン界の中では「中型」に位置します。

🔴:体長:約65cm〜70cm
 
🔴:体重:約3.5kg〜5.0kg(換羽期や季節によって変動)

 

外見の最大の特徴は、

顔の周りにあるピンク色の皮膚と、

胸元を走る1本の太い黒いバンド(帯状の模様)です。

 

このピンク色の部分は、

一見するとお洒落な模様のようですが、

実は「体温調節」のための重要な役割を担っています。

 

温帯に暮らす彼らは、

暑くなるとこのピンク色の部分(血管が集中している場所)に、

血流を増やし、

風に当てることで体内の熱を、

効率よく逃がしているのです。

暑い日ほど、このピンク色が鮮やかになります。

 

また、

お腹の白い部分には小さな黒い斑点(黒点)が、

散りばめられていますが、

この斑点の並び方は人間の指紋と同じように、

 

「1羽ずつまったく異なる」という特徴があります。

飼育員さんは飼育タグだけでなく、

このお腹の模様で見分けることもあるそうです。

アデリーペンギンとの違い

前回のテーマだった「アデリーペンギン」と比べると、

その違いは一目瞭然です。

 

アデリーペンギンが、

「タキシードを着たような完全な白黒のコントラスト」と、

「目の周りの白いアイリング」を持つのに対し、

 

フンボルトペンギンは顔まわりに白い曲線模様があり、

胸に黒い帯があります。

 

また、

極寒の地に生きるアデリーペンギンは羽毛が非常に密で、

くちばしの根本まで羽毛で覆われていますが、

 

フンボルトペンギンは暑さを逃がすために、

くちばしの根本に羽毛がなく、

皮膚が露出しています。

 

暮らす環境の違いが、

そのまま見た目の進化に現れているのです。

 

🩷:2. 故郷はどこ?:南米の乾燥地帯での暮らし

 

フンボルトペンギンが野生で暮らしているのは、

南米大陸の西海岸、

具体的にはペルー中部からチリ中部にかけての、

沿岸地域やその周辺の島々です。

 

砂漠と岩場の過酷な環境

彼らの生息地は、

私たちが想像する「氷の世界」とは真逆です。

 

背後には乾燥した砂漠地帯が広がり、

海岸線はごつごつとした岩場や断崖絶壁になっています。

夏場には気温が30度を超えることも珍しくありません。

 

では、

なぜそんな暑い場所にペンギンが住めるのでしょうか。

 

その秘密が、

名前の由来にもなった「フンボルト海流」です。

 

この海流は、

南極の方から南米の西海岸に沿って北上してくる、

「非常に冷たい湧昇流(深海から湧き上がる海水)」です。

 

空気は暑くても、

海の中は冷たくて栄養がたっぷり詰まっています。

この冷たい海のおかげで、

彼らはオーバーヒートすることなく、

豊かな海の恵みを享受して暮らすことができるのです。

 

【出典・参考元サイト】:ペンギン研究に力を入れている長崎ペンギン水族館(公式)

食性と狩りのスタイル

フンボルトペンギンの主食は、

カタクチイワシ(アンチョビ)やイワシ、

アジなどの小型の群生魚や、イカの仲間です。

 

彼らは時速20キロメートル以上のスピードで、

海中を矢のように泳ぎ、

鋭いくちばしで獲物を捕らえます。

 

ペンギンの口の中には、

奥に向かって無数の突起(肉質のトゲ)が生えており、

捕まえたヌルヌルする魚を、

絶対に逃がさずに丸呑みできる構造になっています。

 

🧡:3. 驚きの繁殖生態:一生を添い遂げる「おしどり夫婦」

 

▲ 一度ペアになると一生を添い遂げるフンボルトペンギン。夫婦で協力して子育てを行います。

 

フンボルトペンギンの生態の中で、

最も人間を感動させるのが「強いペアの絆」です。

 

彼らは基本的に、

一度ペア(夫婦)になると、

どちらかが死ぬまでその絆を解消しない、

「一夫一婦制」を貫きます。

 

グアノの巣穴と子育て

野生のフンボルトペンギンは、

海岸の岩の隙間や、

「グアノ」と呼ばれる、

 

海鳥の糞が何百年も積もって化石化した、

堆積層に深い横穴を掘って巣を作ります。

 

暑い日差しや、

天敵(猛禽類やキツネなど)から卵やヒナを守るためです。

 

繁殖期になると、

オスとオスが巣穴をめぐって、

激しい激突(くちばしで突き合ったりフリッパーで叩き合ったりする)を展開します。

 

無事に巣穴を確保したペアは、

以下のようなステップで共同子育てを行います。

 

1.産卵

通常、1回に2個の卵を産みます。

 

2.抱卵(約40〜42日間)

オスとメスが数日交代で卵を温めます。

交代する時は、

お互いにお辞儀をしたり、

独特の声で鳴き交わしたりして絆を確かめ合います。

 

3.育雛(いくすう)

生まれたヒナは、

最初は自力で体温調節ができません。

 

親鳥は食べた魚を、

胃の中で消化しやすい状態(ペースト状)にし、

口移しでヒナに与えます。

 

これも夫婦が交代で海へ狩りに行き、

協力して行います。

 

4.巣立ち(約10日前後)

ヒナの綿羽(ふわふわの産毛)が抜け落ち、

防水性のある大人の羽(亜成鳥の羽)に生え変わると、

いよいよ海へと旅立ちます。

 

フンボルトペンギンは温帯に暮らすため、

極地のペンギンのように、

「短い夏に急いで子育てを終わらせる」必要がありません。

条件さえ良ければ、

一年のうちに2回子育てをすることもあります。

 

💛:4. 人間との歴史:かつての繁栄と「 guano(グアノ) 」の悲劇

フンボルトペンギンはかつて、

数百万羽という圧倒的な数で、

南米の海岸線を埋め尽くしていました。

 

しかし、

19世紀以降、

人間の経済活動によってその数は、

激減することになります。

 

その引き金となったのが、

前述した彼らの巣の材料でもある「グアノ(鳥糞石)」です。

 

窒素肥料としての乱獲

19世紀、

グアノに大量の窒素やリンが含まれていることが発見され、

ヨーロッパやアメリカで「夢の有機肥料」として、

爆発的な需要が生まれました。

 

産業革命期の農業を支えるため、

南米の海岸や島々から、

何メートルも降り積もっていたグアノが、

容赦なく掘り起こされ、削り取られていきました。

 

これはフンボルトペンギンにとって致命的な大打撃でした。

家(巣穴)を掘るための、

土台そのものを人間に持ち去られてしまったため、

彼らは地表の吹きさらしの場所や、

保護されない岩場に卵を産まざるを得なくなりました。

 

その結果、

卵やヒナが直射日光で干からびてしまったり、

カモメなどの天敵に、

簡単に食べられてしまったりして、

繁殖成功率が急降下したのです。

 

さらに、

主食であるカタクチイワシ(アンチョビ)の、

人間による過剰な商業漁業や、

数年に一度発生する「エルニーニョ現象(海水温が上昇し、

 

フンボルト海流が弱まる気候変動)」が、

追い打ちをかけました。

 

海水温が上がると魚がいなくなり、

親鳥はヒナを置いて遠くまで、

狩りに行かなければならず、

巣に遺されたヒナが餓死するという、

悲劇が頻発したのです。

 

現在、

野生のフンボルトペンギンは、

約20,000〜30,000羽にまで減少していると推定されており、

 

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、

「危急種(VU:Vulnerable)」

 

絶滅の恐れがある野生動植物の、

国際取引を規制するワシントン条約では、

「附属書I(最も規制が厳しい分類)」に指定されています。

 

💚:5.日本とフンボルトペンギン:なぜ日本にはこんなにたくさんいるの?

 

▲ 日本の気候に馴染みやすいフンボルトペンギン。国内の多くの水族館で元気に暮らす姿が見られます。

 

野生では絶滅の危機に瀕しているフンボルトペンギンですが、

実は世界で最もフンボルトペンギンが過密に、

そして元気に暮らしている国があります。

それが、ここ「日本」です。

「ペンギン大国」日本

日本国内の水族館や動物園では、

現在約60施設で、

1,000羽以上のフンボルトペンギンが飼育されています。

 

これは、

世界中で飼育されているフンボルトペンギンの、

約1割近くが日本にいる計算になります。

海外の専門家から見れば、

まさに驚異的な数字です。

 

なぜ、

日本でこれほどまでに増えたのでしょうか。

理由は大きく3つあります。

 

1.日本の気候との相性が抜群によかった:

南極のペンギンを日本で飼育するには、

24時間冷房の効いた専用の室内施設(ペンギン館など)が必要です。

 

しかし、

温帯育ちのフンボルトペンギンは、

日本の四季(夏の暑さから冬の寒さまで)に、

そのまま適応できます。

 

屋外のプール付き展示場で健康的に暮らせるため、

多くの施設で導入されました。

 

2.日本の飼育技術・医療の高さ:

日本の水族館の飼育員さんたちの、

熱意と技術は世界トップクラスです。

 

1羽ずつの健康状態を毎日チェックし、

栄養バランスを考えた餌(アジやシシャモなど)を与え、

水質を綺麗に保ちます。

 

また、

ペンギン特有の感染症、

(カビが原因の曲菌症や、蚊が媒介するマラリア)の、

予防・治療法が日本で大きく確立されたことも、

生存率を高めました。

 

3.高い繁殖成功率:

居心地がよく安全な環境、

そして天敵がいない日本の水族館で、

フンボルトペンギンたちは次々と恋に落ち、

ヒナを育てました。

 

増えすぎたために、

現在では血統管理を厳格に行い、

避妊対策(擬卵へのすり替えなど)を行うほど、

日本のフンボルトペンギン社会は繁栄しています。

 

新潟県上越市「うみがたり」の奇跡

日本におけるフンボルトペンギン飼育の聖地といえば、

新潟県上越市にある「市立水族博物館 うみがたり」です。

 


ここでは、

チリのサンティアゴ・メトロポリタン公園(国立動物園)からの、

野生復帰計画への協力などを経て、

世界一の飼育数を誇る大集団が形成されました。

 

飼育エリアは彼らの故郷であるチリの、

海岸を忠実に再現しており、

圧倒的な数の、

一大コミュニティを間近で観察することができます。

 

💙:6. 私たちにできること:水族館から野生の海へ繋ぐ未来

日本で当たり前のように見られる、

フンボルトペンギンですが、

私たちは彼らを、

「ただ可愛い癒やしの動物」として消費するだけでなく、

彼らが発している野生からの、

メッセージを受け取る必要があります。

 

「域外保全」の重要拠点としての日本

野生の個体群が病気や、

巨大な環境破壊(大規模な原油流出事故や超巨大エルニーニョ)で、

一瞬にして全滅してしまうリスクは常にあります。

 

その際、

日本で健やかに育ち、

遺伝的多様性が守られているフンボルトペンギンの血統は、

地球上からこの種を絶滅させないための、

「最後の砦(バックアップカプセル)」としての、

重大な意味を持っています。

 

日本の水族館は今、

世界中の動物園・水族館と連携し、

遺伝子を多様に保つための、

個体交換(お見合い移送)を積極的に行っています。

 

地球環境のために私たちができる小さなアクション

彼らの未来を守るために、

遠く離れた日本に住む私たちにもできることがあります。

 

サステナブル・シーフードを選ぶ

認証マーク(MSC認証など)のついた、

海の資源を守る方法で獲られた水産物を選ぶことは、

ペンギンたちの主食である、

イワシなどの獲りすぎを防ぐことに繋がります。

プラスチックゴミを減らす

海に流れ出たプラスチックゴミやマイクロプラスチックは、

フンボルト海流を巡り、

ペンギンやその獲物たちの体内に蓄積されます。

 

日常のゴミを正しく分別し、

減らすことが海のクリーンアップに直結します。

水族館に足を運び、関心を持つ

水族館の入場料の一部は、

彼らのエサ代だけでなく、

野生ペンギンの保護団体への寄付や、

調査研究費として役立てられています。

 

彼らを観察し、

生態を知り、

好きになること自体が、

保護への第一歩なのです。

 

【出典・参考元サイト】:特設ページへの直接リンクすみだ水族館の「ペンギン相関図」

結び:身近だからこそ、尊い存在

フンボルトペンギンは、

その人間くさいドラマ、

(浮気や嫉妬、情熱的なプロポーズ、おしどり夫婦の愛)を、

私たちに包み隠さず見せてくれる、

非常にエモーショナルで魅力的な鳥類です。

 

ペルーの過酷な砂漠の岩場で、

波のしぶきを受けながら力強く生きる野生の姿。

 

そして、

日本の水族館で飼育員さんを一生懸命追いかけ、

ペタペタと歩く愛らしい姿。

そのどちらもが、

フンボルトペンギンの真実の姿です。

 

アデリーペンギンが、

「氷世界の孤高のランナー」であるならば、

フンボルトペンギンは、

「太陽と海流と共に生きる、人間の一番近い隣人」と言えるでしょう。

 

次に水族館で彼らの胸の黒いバンドや、

お腹のポツポツ模様を見たときは、

ぜひ彼らが、

はるばる南米から繋いできた命の歴史と、

冷たいフンボルト海流の風を感じてみてください。

 

 

 

  • 【AI生成画像について】
    ※本記事の画像はGeminiに搭載されている
    (Image generated by AI)で画像生成機能
    (Imagen)を使用したAI生成画像です。
    イメージ画像のため、実際の個体や
    現地の状況とは,異なる場合があります。

 

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